アスレティックトレーナーの中谷大志です。
日々発表される新型コロナウイルスの感染者数も減少傾向にあり、各国で野球やその他のスポーツも開幕したり、気候が暑くなってきたり、心なしか光が見えてきた気がします!
とはいっても、首都圏は今月いっぱいの緊急事態宣言や自粛要請は続きそうで、チームの練習制限も継続中です。
明らかに今シーズンのプレーできる期間は短くなっています。
その辺りを考えると、宣言解除後から選手個人のアピールとしてもチームとしても例年以上に1日たりとも無駄にできない日々が続くことでしょう。
そのために、今、何ができるか?
6月以降、約半年間しっかり戦える身体を準備することだと思います。
現在の練習環境下によっても状況は異なりますが、ある程度身体が動かせる場所や個人練習が確保されてる場合は、始まってから身体を慣らしていこうでは、大きな遅れを取りかねません。
その焦りから、ペースを崩し怪我や能力を発揮できないという悪循環の中、気づけばシーズンアウト、、、それでは確実に後悔します。
ですので、今大切なのは、心身ともにスタートダッシュが切れる身体を準備しておくことだと思います。
どうしても、実践でしかできない練習や精神的な負荷、集中度の違いなどはありますが、「あとはそこを仕上げるだけ」という状態で解禁を迎えられるかが、チーム内の競争、相手チームとの戦いに影響を与えるはずです!
トレーナーという立場ですので、各種測定の数値などをもとに、日々そういったことを口うるさくチーム内に周知する中で、今月のNSCAの機関誌内の特集記事で「野球選手における身体形態の特性」といったタイムリーな記事が掲載されていました。
以前から帯同チームでは、BASEBALL GEEKSさんの記事「野球選手必読!トレーニング期に目指すべき体重・筋量の目安とは」で勝亦陽一先生が示されている数値を参考に、
- 脂肪量指数 (脂肪量÷身長2)
- 除脂肪量指数 (除脂肪量÷身長2)
この2つの数値を中心に選手の身体組成を管理しています。
前回のブログ記事『アスリートの寿命〜トレーナーとして想うこと〜』で、「野球選手としてトップレベルで長くプレーするには2年周期を目安で次のカテゴリへの身体的準備をした方が可能性が高い」といった内容を書きました。
これは決して感覚の問題ではなくて、上記の特集を読んでもらえばわかるように、野球に関しては実際にカテゴリレベルが上がるにつれて身体形態も上がっています。(上がるとは数値がカテゴリ相応の大きさになっているということ)
特集記事より厳選した数値のみピックアップさせていただき、現在、私がトレーナーとして帯同している社会人野球のカテゴリ(ある時期の1例)を加えてまとめてみました。
(MLB:メジャーリーグ NPB:日本プロ野球)
身長は遺伝要素も強く成長してからは変えられないので仕方ない部分でありますが、平均値からすれば、身長、体重、BMIといった体格はカテゴリが上がるにつれて大きくなっています。
改めて、ある程度の体格を獲得することが必要なことと、同時に身長が低くてもMLBやNPB、社会人といったカテゴリで活躍する選手の特別さにも気付かされます。
次に、その体格の中身の部分の数値です。
やはり、前3項目と同様にカテゴリが上がるほど、除脂肪量(脂肪以外の量で主に筋肉がしめる)指数が大きくなります。
数値をみると学生野球からプロや社会人に上がるにつれて、脂肪量指数にばらつきが出てるように感じます。
個人的な推測ですがこれはトップレベルに上がるほど、より各選手に専門性が必要とされるため、脂肪量がある程度高くても除脂肪量の確保が必要なポジションやプレースタイルや逆に除脂肪量アップに固執しすぎず、脂肪量を増やさない事が必要なポジションやプレースタイルがあるのでこのような結果になっているのかなと考えます。(個人的な見解です)
学生野球から社会人以上のカテゴリに上がる際は、除脂肪量指数とともに脂肪量も多少上がっているが、数値を改めて並べてみた際、注目すべき点は社会人→NPB→MLBと上がるに連れ脂肪量指数が低くなっている事だと思います。
除脂肪量指数が上がって、 脂肪量指数が下がる。
つまり、カテゴリが上がると身体の中身の部分が違う。
筋肉が多く脂肪が少ないということになります。
社会人とNPBで比べて見れば、大体の身長、体重、BIMといった体格が同程度にも関わらず中身の部分で差があるということが数値から読み取れます。
実際に現在帯同しているチームでシーズン中の数値の変化も顕著にでます。
1月のチーム始動の段階では、社会人選手のため、大会のない12月は会社勤務を優先しその中で普段応援して頂いている方々とのお付き合いもありお酒の席が増えトレーニング時間が減ることなどから、脂肪量指数のチーム平均値が 5.0 kg/m2を超えることも、、、
ここから基礎的な走動作、切り返し動作、爆発的な動作、ウエイトトレーニング、などコツコツと積み重ねていき2月にキャンプイン
3月オープン戦、4月から各大会が始まっていきます。
2020年はこういった状況で上半期の大会は中止になってしまいましたが、4月時点で1月と比較して、
- 脂肪量指数 −0.4 kg/m2
- 除脂肪量指数 +0.7 kg/m2
まさに「脂肪量が減って筋肉量が増える」数値的にはナイスな仕上がりでした。ほとんどNPBの値(やや脂肪量が多い)ぐらいでした。
しかしこの1ヶ月の練習制限、生活の制限などで5月時点で4月と比較すると、
- 脂肪量指数 +0.1 kg/m2
- 除脂肪量指数 − 0.2 kg/m2
避けるべき状態である、「脂肪量が増えて筋肉量が減る」といったことになっています。
平均値なので、上手く過ごせている選手は引き続き仕上がった状態を維持または向上できており、チーム全員の数値が落ちたというよりは、チーム内の個人差が広がったようなイメージになります。
もちろんですが、これに加えてスプリントタイムや、アジリティタイム、ウエイトトレーニングのパワー値、野球のパフォーマンス(スキルコーチの声や本人の感覚)など各種測定項目と食事、睡眠状況、など様々な要素を照らし合わせた上で、向かうべき方向性が間違ってないか、私のプログラムデザイン、コンディショニング 計画が間違っていないかを確認、調整していきます。
すごく小さな数値に感じるかも知れませんがこれが今月もう1ヶ月同じように続くと2月のキャンプ前同等の数値となり、もう一度2ヶ月程度かけて身体を戻す計算になってしまいます。
しかも、これからの季節は暑い日が続き技術練習やコンディショニングに取り組める量は確実に減ってきます。
そこで焦って追い込んでしてしまうと3〜4ヶ月後までコンディションが戻らず、2020年シーズンで1番大切な秋〜冬にかけての大会でのベストパフォーマンスを発揮できる可能性は下がります。
そうならないための、今、この時間です!
個人練習しかできなかったり、練習時間、場所の制限を余儀なくされているアスリートは多くいると思いますが、このような環境下で心身ともに自分をコントロールできる選手というのは、言葉で表すと安っぽくなるので難しいですが、、、
「芯がある」というか対話の中に「ホンモノの強さ」を感じます。
決して、アスリートがに怠けんな!と言いたいのではありません。
本当に、本当に貴重な選手生活(アスリートの寿命)1日1日を大切にして欲しい、後悔して欲しくないという想いです。
これからもっと選手との年齢が離れるとアスリートへの寄り添い方も難しくなるでしょう。
しかし、アスリートへの敬意を忘れなければ、年齢関係なく、トレーナーという存在から伝えるべきことは多くあると思っています。
まあ、先のことを考えても仕方ないので、、^^;
目の前のチームの選手と、各地で私を頼ってくれる仲間が1歩でも前に進めるように精進します!
しっかり話がそれましたが、「野球選手として必要な身体」についてでした!
では、この辺で!
最後までお読み頂きありがとうございました。
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“トレーナーが考える野球選手が必要な身体とは? 〜脂肪量・除脂肪量を指標とした場合〜” に1件のコメントがあります