どうも、トレーナーの中谷大志です。
今回は、アマチュア野球界の頭頸部外傷の認知について書きます。
そもそも、”頭頸部外傷”とは読んで字のごとく頭や頸の怪我です。知識がなくてもなとなくこの2ヶ所の怪我と聞くと命の危険がありそうだったり怖いといったイメージは湧くと思います。
今回は野球というスポーツに絞って考えていきたいと思います。
まず、頭頸部外傷が起こり得る場面は、、、
- 頭部への死球(投手が投げた球が打者に当たる)
- 打球の頭部直撃(特に投手へのライナー多い)
- 選手同士の衝突(走者と守備、守備と守備)
- フェンス、地面などへの衝突
- 間接的な頭・頸への衝撃(ヘッドスライディング・ダイビングキャッチ)
など。
このような場面により起こり得る外傷は、、、
- 脊椎・脊髄損傷
- 頭蓋骨骨折
- 脳損傷(脳挫傷・硬膜外血腫・硬膜下血腫)
- 脳振とう
などが特に重要でスポーツに関わる全ての人が知っておくべきものです。
なぜ、重要か?シンプルですが命に関わるからです。私たちトレーナーと呼ばれる人間は(トレーナーとは?)で書いたように働き方は様々ですが、命を守ることは同じだと思います。また、トレーナーのみならず、トレーナーが常駐していないチームや部活動の指導者や父兄の方々も必要最低限の知識をもつ必要があります。
では、このような場面の際どういった対応をすれば良いのか実例を交えてを説明していきます。
→社会人野球の試合でのこと、外野手が打球を追ってそのまま勢いよくフェンスに激突しうつ伏せのまま倒れて動きませんでした。
この際、ベンチからその場まで駆けつけながら上記のような起こり得る最悪の状況を頭に入れ、まず疑うべきはもっとも重症度の高い”脊椎・脊髄損傷”です。
その為まず最初にやることは、、、
- 動かさずに意識、見当識の確認
- 頭痛や首、背中の痛みの確認
- 手足のしびれ、感覚麻痺、力が入るかを確認
実際にうつ伏せのまま選手にこのようなことを確認している最中に審判の方に「とりあえず運ぶから仰向けにしなさい」と無理矢理、身体を動かされそうになりました。知識のなさから重大事故に発展する可能性を肌で感じた瞬間でした。このような間違った行動や野次馬を冷静に制するのも私たちの仕事です。
(※見当識…ここはどこ?相手チームは?など誰でもわかること。)
幸い、意識等の喪失はなく脊髄損傷などの可能性も低いと判断し仰向けに体位変換をしました。次に行うのは、、、
→脳神経機能チェック
- 視力がはっきりしているか
- 視野欠損がないか
- 目が開き眼球が全方向動くか
- 額にシワを寄せれるか
- 顔の知覚に左右差がないか
- 聴覚に左右差がないか
- 舌が思うように動くか
- 言葉を発せれるか
脳には12の神経がありそれぞれの機能があるので、細かく確認すればもう少しありますが、フィールドレベルでは上記のようなことに異常がないかを簡易的にチェックします。これを確認している時にまた先ほどの審判の方に「先に水飲ませろ、脱水状態だ!」とまた絡まれました。確かに暑い日でしたがそれで倒れた訳ではありません。でも嚥下が正常にできるかどうかのチェックに飲水は意外と間違ってないかも(笑)と冷静に優先順位を判断しつつ対応します。
異常がなければ、ようやくその場に立たせてバランステストで平衡感覚に異常がないかなどを評価します。なかなか実際の現場で、頭で考えながらの評価は難しいのでこのような評価ツールもあります。
あとは、その他の部位に怪我や出血がないかを評価してプレー続行可能か否かを判断します。
このように、専門的にかつ丁寧に評価を行えば命を守るための少しの時間が必要です。しかし、アマチュア野球では、先ほどの審判などのように”すぐ運んで裏に下げること”が最優先になってしまっているのが現状です。そして搬送することも実は訓練が必要なぐらい簡単なことではありません。プロ野球界でも最近ではトレーナーによる頭頸部固定や評価後のスパインボーディングが徹底されています。(他競技に比べれば遅いですが)
話が少しややこしくなりましたが専門家がいない時は、、、
- まず動かさずに声をかけて意識の確認
- 頭、頸、背中に強い痛みや手足のしびれがないか
- 当たり前のことが答えれるかを確認する
- 少しでも異変があればすぐ病院へいく
これだけでも気をつけて上記のような評価ツールを利用すれば重大事故に繋がる可能性は減らせるはずです。
まだ、頭頸部外傷への認知が低いアマチュア野球界で専門家である私たちが言動で示して行かなければトレーナーの存在価値が下がり、尚且つ、重大事故の発生にも繋がりかねないので、いつ何時でもリーダーシップをとれるような準備が必要だと感じます。
私が帯同するチームでは1月の新年のスタートと同時にSCAT3を利用して全員の正常時の点数を把握しています。
ラグビー、アメフト、サッカーなどのスポーツとなると当たり前の準備なのですが、トップレベルのアマチュア野球選手でも見事に全選手が「こんなこと初めてやった」ということでした。こういったところが野球界の頭頸部外傷に対する意識の低さでもあると思います。
細かいこと、面倒くさいことを丁寧に手を抜かずに行うことは何事においても大きなミスを起こさない1番の方法ではないでしょうか。
以上、今回は頭頸部外傷の対応の大切さと認知の必要性に関する内容でした。
今後、自身の復習も兼ねてそれぞれの外傷に関して掘り下げた内容もupしていく予定です。
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