どうも、トレーナーの中谷大志です。
↑では、痛みに関しての内容をupしました。(本記事の内容理解のためにぜひ復習を!)
今回は、医療従事者でなくても、口にしたり耳にしたりすることの多い”炎症”という症状について整理していこうと思います。
●炎症とは
「これは炎症が起きてますね」と医者に言われたり、「炎症の疑いによる戦線離脱」のスポーツ選手がいたり、ネガティブワードとして使われていることが多く、悪者と思われがちな存在かもしれません。
痛いから病院へ行ったり、痛いから運動が出来ないことが多く、医療従事者やトレーナーは痛みを中心として炎症症状の理解が必要だと感じます。
しかし炎症とは、その組織の正常な機能が損傷を受けることで起きる防御反応で治癒へ向けた準備段階と言えます。
主要5大徴候として、、、
- 熱感
- 発赤
- 腫脹
- 疼痛
- 機能喪失
→損傷修復のための材料を運ぶ血管に乗せて白血球や蛋白質を運び血管外に出る
→その材料を効率よく運ぶため血管拡張が起き、血流量の増加が起きる(発赤・熱感)
→血管の外に材料を運ぶ出すためには、血管の透過性を高めることで効率が上がる(腫脹)
→材料と一緒に運ばれてきた白血球が細菌や壊死部を処理し発痛物質を産生・放出する(疼痛)
→腫脹や疼痛により本来の働きが困難になる(機能喪失)
医者や治療家、トレーナーから炎症が起きてるから痛いと説明されれば何となくわかっていなくても納得した感じになる人も多いと感じます。
言い換えれば、痛みはそこに炎症があるサインとしても重要であるといえる。
それは炎症の症状のひとつに痛みがあり、その痛みの原因として炎症が起きているところで”発痛物質”が産生・放出され痛みを感知する自由神経終末を刺激するからです。
痛みのスタートで説明したようにここから 痛みの原因→起動電位→活動電位の発生 という流れになっていく。
例えば、擦り傷や切り傷などケガををした際には、侵害刺激による痛みに続いて、発痛物質による痛みにより痛みがその後も持続するというイメージが分かりやすいと思います。
●発痛物質とは
発痛物質には、発痛作用と発痛増強作用がある。
発痛増強作用とは、痛みのセンサーの感受性を高めて普段より痛みを強くする作用です。
発痛物質には、、、
- ブラジキニン
- ヒスタミン
- アセチルコリン
- セロトニン
- カリウム
- 水素イオン
- プロスタグランジンE
- サブスタンスP
- 各種サイトカイン
- 一酸化窒素
などがあり、炎症の場では色々な発痛物質が混在している。
●出血と痛み
→発痛増強作用を持つ物質として”プロスタグランジンE”があり治療の標的となる
通常は血管内に存在し、出血などで血管外に出ると痛みの原因となり、出血部に自由神経終末があると痛む
これは血漿に発痛物質や発痛物質の素が含まれているからである
→発痛作用が強力なのは”ブラジキニン”と”ヒスタミン”
常時血管内に存在しているため血管外にある痛みの自由神経終末に到達せず痛まないが、出血により痛みの原因となる
怪我で発生する止血作用の血液凝固因子Ⅻの活性化は同時にブラジキニンの素である”キニノーゲン・プレカリクレイン・XⅠ因子複合体”も同時に活性化する。
つまり血中にある発痛物質の素として”キニノーゲン・プレカリクレイン・XⅠ因子複合体”が存在する
●虚血と痛み
虚血とは、酸素需要に対して供給が追いつかない状態で
- 酸素需要の増加
- 酸素供給の低下
- その両方の同時発生
などが理由として考えられる。
なぜ、虚血で痛むのか?
→虚血部位で酸素不足により、乳酸(水素イオン)、ブラジキニン、カリウムイオンといった発痛物質が増加するため
◯乳酸の産生
→酸素不足でピルビン酸が乳酸となり乳酸の蓄積
→乳酸の水素イオンが痛みのセンサーを活性化する
運動直後に起こるいわゆる筋肉痛がこれだと考えられます。
◯ブラジキニンの産生
→乳酸産生によりアシドーシス(血液が酸性方向に傾く)となり血漿プレカリクレインが活性化されカリクレインとなる
→カリクレインがキニノーゲンからブラジキニンを産生し痛みを発生
◯K+の局所増加
→虚血状態ではATPの枯渇によりNa+/K+ポンプが作動せず細胞外のK+が高まる
→K+濃度の上昇は活動電位が発生しやすくなり、痛みの神経線維が敏感になる
●炎症物質=発痛物質?
炎症物質は、、
- 破壊された細胞質内からの放出
- 傷害を受けた神経線維からの神経ペプチド放出
- 肥満細胞や大食細胞からの放出(⒈⒉により放出増強)
- 動員された好中球・リンパ球から放出
- 止血のために動員された血小板からの放出
これらが、発痛物質の生産地になる。
→炎症物質=発痛物質と考えても良いといえる
→炎症物質があると活動電位が出やすくなる
→キズの周りを触れると痛いのはこれらの炎症物質が増加しているためである
●ブラジキニンによる痛み
→ブラジキニンそのものが起こす
- C線維の自由神経終末に存在するブラジキニンとブラジキニン受容体が結合
- 自由神経終末でチャネルが開きNa+が細胞内に流入
- 膜電位が上昇し閾値を超えると起動電位となる
- 起動電位により電位依存性Na+チャネルが開き本格的にNa+が流入
- 活動電位が発火し痛みの伝導がスタート
→チャネルの感受性をブラジキニンが高める
- TRPVチャネルという低温や熱刺激があるときにNa+を通過させるチャネルの感受性を高める
- ブラジキニンが存在すると熱刺激などの痛みに普段より敏感になる
●プロスタグランジンEによる痛み
機械的刺激、熱刺激、冷刺激による痛みを増強させる、すなわち起動電位と活動電位を起こしやすくする
→炎症の場ではプロスタグランジンEと発痛物質が混在しているため痛みの活動電位が発生しやすくなっているといえる
裏を返せば、プロスタグランジンEがなければ活動電位が発生しにくくなる
これを利用したのが、ボルタレン・ロキソニン・セレコックス・モーラスといった抗炎症鎮痛薬で、プロスタグランジンEの産生を抑制し鎮痛効果をもたらしている
整理すると、、、
俗に言う、『痛みどめ薬』は、プロスタグランジンEを抑制し活動電位が敏感になっているのを通常の状態へ近づけ発痛物質に反応せず起動電位から活動電位(痛みのスタート)を起こさないようにブロックしているといえる。
●炎症症状の消失の順番
- 熱感・発赤がとれる(血管拡張が元に戻る)
- 痛みが減少する(発痛物質が減少)
- 腫れが引く(滲出液が吸収)
このような順番で炎症は消退していきます。
炎症過程と治癒過程がイメージできれば目の前の選手の怪我の状態評価もより適切に行えると思います。
少し、カタカナ表記やアルファベット表記が多くなりましたが、前回の記事を振り返りながら整理すれば、痛みの発生や炎症と痛みの関係性に関して少しずつクリアになってくると感じました。
ややこしく感じ敬遠しがちなジャンルだと思いますが、目の前の選手や患者様にとって痛みは最初に訪れる敵です。
その敵の正体を少しでも知っておくことは、スポーツ選手が試合前に相手の情報を得ることと同様、戦うために必要不可欠なことだと思います。また、治療や応急処置の際にどのアプローチをするかにおいての適切な判断に繋がり早期復帰や悪化の防止となります。
今回は痛みに関しての視点から炎症をみていきましたが、その他の徴候にも痛みの発生と同様に様々な炎症物質が作用し起きています。
今後とも”痛み”というワードは常につき回ってくることなのでさらに色々な角度(鎮痛・痛み記憶など)から知識を深めていかなければいけないと感じております。
「この人がいて良かった」「この人に出会えて良かった」と一人でも思っていただくことが職業価値をあげることに繋がると信じて日々成長するのみ。
では、この辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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