どうも、トレーナーの中谷大志です。
今回は今夏、聞き飽きるほど日々、耳にする”熱中症”に関して。
先日も帯同チームの選手がネット検索しながら「”熱中症”と”熱射病”は一緒らしいですよ」と専門家である自分に言ってきました(・・;)笑
何でも調べたら出てくるので、デタラメな情報に負けそうになる時さえあります。そういう時は正しい知識をものすごく噛み砕いて分かりやすく説明します。
「そういう事か!」と選手に言わせれば自分の勝ちです。ネット上のものは全て正しいという初期設定から覆すのは至難の業ですが自分のスキル試しとして楽しんでます。
話はそれましたが、酷暑が続く日本列島で真夏のスポーツとも言える高校野球でも、ナイター試合(夜間18〜22時頃)で行うなどの異例の対策がとられるほどの事態です。
よく聞く「水分補給」「塩分補給」「冷却」「休息」など何となく聞こえてくる対策をとるだけでは防げないと状況だと感じます。実際、これらを行っていても、”行うタイミング”や”行う方法”が違えば防げないです。
ではどうすればいいのか?
それは、熱中症に関して知ることです。
何かの記事に熱中症の原因は『無理と無知』とありましたが、まさしくそうです。知らない相手と戦うのは難しいですが、知っていれば確実に防げます。
防げる命が日々の報道で取り上げられていることは非常に心が痛いです。
そもそも、”熱中症”とは暑熱環境によって起こる身体の様々な異変の総称です。
つまり、一言に熱中症といってもレベルがあり、代表的な4つの症状が以下です。
- 熱失神
- 熱けいれん
- 熱疲労
- 熱射病
熱中症はこのように分類され、1(熱失神)から4(熱射病)に行くほど重症といえます。
では、ひとつずつ特徴や対処法を説明していきます。
『熱失神』
(原因)
暑い中で運動などをすると身体の熱を逃がすために、皮膚の血管を拡げて血液を集め、立ちっぱなしなどでは下肢に血液が溜まる。それと同時に激しい運動によって筋肉への血流量も増える
この2つの血液の奪い合いによって血圧が下がり、脳や心臓への血流量が少なくなる。
(症状)
- めまい
- 顔面蒼白
- 脈が速くなる(弱く速い)
- 一時的な失神
(対処)
- 衣服を緩め、涼しいところで足を高くして横になる
『熱けいれん』
(原因)
大量の汗をかき、体内の塩分濃度が低下します。またその際に水やお茶などのみを補給すると血液の塩分濃度がさらに低下し、筋肉のけいれんが起きる
(症状)
- 筋肉の痛み
- 下肢、腹部、背部などの筋のけいれん(つり)
(対処)
- 生理食塩水(約0.9%の食塩水)や経口補水液などを摂る
『熱疲労』
(原因)
熱失神や熱けいれんのメカニズムから血液の循環障害が起き水分補給が追いつかない状態
※体温が上がらないこともあるので注意する
(症状)
- 全身のだるさ
- 悪心・嘔吐
- 頭痛
- 集中力の低下・ぼーっとしている
(対処)
- 氷水で濡らしたタオルで全身冷却、団扇などであおぐ
- 経口補水液やスポーツドリンクで水分・塩分の摂取
- 嘔吐により摂取が難しい場合は直ちに搬送し点滴
『熱射病』
(原因)
熱疲労などの処置が追いつかず体温調節のシステムが破綻し、中枢機能障害が起きる重症状態で即救急搬送する 搬送までの懸命な処置が予後を決定
現場トレーナーとしてはこの状態にしてはいけないと考えるべきだが、なってしまった時の準備も必要不可欠
(症状)
- 高体温
- 意識障害
- 反応が鈍い
- 言葉がおかしい
(対処)
- 氷水をかけて仰ぐ、冷たいバスタブに入れるなど一刻も速く体温を下げる
- 迷わずに救急車を呼ぶ
このように、熱中症には休憩すれば改善する軽度のものから命に関わる重度のものまであり、いかに経過を診れるか、種々の症状に気づけるかが重要となります。
こういった熱中症の知識があれば改善に向かっているのか、悪化しているのか、すぐに搬送すべきかなどその場の判断はつきやすくなると思います。
また、4つを分けて説明しましたがはっきりと分かれているわけではなく様々な症状が併発するケースも十分に考えられます。
私自身、トレーナー活動中は第一に”熱失神”や”熱けいれん”の段階で気づくこと、もし発症してしまった際には適切な処置をすることでいかに熱疲労を起こさせないかを意識して取り組んでいます。
正直なところ、このような酷暑の中、練習や試合をすればどれだけ気をつけていても”熱失神”や”熱けいれん”などのいわゆる軽めの熱中症は頻繁に起こってしまいます。だからWBGTなどの暑さ指数によるの運動禁止レベルがあるのだと思いますが、その数値を守ってしまうと一切練習できなくなり、現実的ではないのが現状です。
だから、対策と準備が必要なのです!!
日本の国民性もあってか、スポーツの中でも野球は特に「休まないのが良い選手」「休息を取るのは弱い」「倒れてもないのに休むなんて大げさ」などという風潮が強いです。
怪我をする前に、倒れてしまう前に、対応することが大切で「我慢=美談」を変えなければいけません。
もちろん我慢が必要な場面や多少の無理はスポーツにはありますが熱中症や頭頸部外傷など命に関わることは、悪化してからでは取り返しがつかないので、無理をするという選択肢はありません。
その件で指導者と口論になりそのチームのトレーナーを解雇されても、選手にうざがられても譲ってはいけないと思っています。
実際に今のチームでも、熱中症気味の選手に少し休息を指示すると指導者や周りの選手の目を気にしてものすごく嫌がります。そして必ず「大丈夫です」と言います。
その時ばかりは絶対に選手を信頼してはいけないです。
競技が盛んな時期が夏季なことや、練習時間の長さ、ユニフォームが厚着なことなどの要因以外にもこのような、自らの異変や不調を訴えにくい風潮も野球というスポーツの熱中症発生率が1番多い原因の一つではないかと思います。
- 熱中症に関しての知識を得れば原因の一つ”無知”はクリア
- たとえ選手が嫌がっても原因のもう一つ”無理”をさせないこと
この2点で熱中症での重症事故は100%防げます!
また、そういったことを選手が訴えやすい環境や雰囲気作りもトレーナーの大きな仕事だと考えています。
次回は、現在チームで取り組んでいる熱中症対策なども踏まえながら、水分補給に着目した内容をupします。
以下、参考ページです。
大塚製薬「熱中症から身体を守ろう」
日本スポーツ協会「熱中症を防ごう」
環境省「熱中症予防情報サイト」