熱中症対策〜自発的脱水とは?〜

どうも、トレーナーのAmbiです。

8月に入り、まだまだ災害レベルの酷暑が続きそうです。日々のニュースでは”奈良判定”と”熱中症”が半分以上を占めていますね(^_^;)

前回の記事では、なぜ水分補給が必要か?を汗の役割を解説しながらの内容となりました。

今回は、その必要とされた水分補給に関しての内容に入っていきます。

何をどう飲むかの理解を深めるために前に体水分の調節はどのように行われているのかをみていきたいと思います。

前回に引き続き、専門家以外の読んで下さっている方には遠回りで難しい内容で申し訳ございません。

ただ、専門家にとっては「急がば回れ」であり、選手やクライアントさんの”なぜ?”を分かりやすく解消するには必要不可欠な内容だと思います。

耳にしたこともあるかもしれませんが、年齢や性別によって差はあるものの身体の約60%は水分が占めています。

ヒトは1日約2500ml摂取し、同量を排出しています。

飲料から約1200ml、食物から約1000ml、代謝水(エネルギーを得る時に発生する水)300mlで摂取し、大部分が汗や尿で排出されています。

では、夏場の暑熱環境下での大量の汗はどれぐらいの量になるか?

おおよそ、真夏の暑い日の発汗量は2時間程度で約2ℓ以上になるといわれています。

発汗量の推定方法としては、、、

運動前後の体重差+運動中の水分摂取量が運動中の発汗量となる。

例:前後差(75.8 – 74.5) +水分摂取量(1.5ℓ)=発汗量(2.8ℓ)

実際にスポーツ現場では正確に全員の摂取量を計測するのは困難なため、体重の前後差を”–2%”を基準として水分摂取量の過不足を評価しています。

気温が30℃以上の場合、体重の2%の脱水で持久的運動能力、認知機能などが明らかに低下するといわれおり、これらパフォーマンスの低下は練習の質が落ち怪我のリスクが上がると考えれます。また、2%以上の脱水では1%ごとに体温は約0.3℃、心拍数は約5〜10拍/分上昇してしまう。

熱中症のリスクからも怪我のリスクからも2%の脱水が一つの基準になるといえるでしょう。

例:70kg→2%は1.4kg→68.6kg

68.6kgを下回らない水分補給を意識する

毎日、測定していると体重が減りやすい選手、さほど変わらない選手などの傾向が現れ、100%ではないですが見事に熱中症症状を訴えることが多い選手は体重減少が2%に近い選手が多いです。

この評価方法だけでも、暑熱環境下での運動の際に特に注意して観察が必要な選手をピックアップすることができるため、大切なリスク管理方法といえます。

※気温20℃程度では2%の脱水でも大きな影響はなく3〜5%でパフォーマンスが低下し始める。




しかし、暑熱環境での大量の発汗は飲水が追いつかず、脱水状態を完全にもとに戻すことはできずに、体温が徐々に上昇してしまうことがある。

脱水で体温が上昇するメカニズムはこちらから復習どうぞ。

ここではまた少しややこしい話になりますが、水分補給を理解するためにトレーナーとしては理解しておかなければいけない身体の仕組みでもある、体の水分を調節するメカニズムについて書いていきます。

体内の体液量の調節機能は以下のふたつがあります。

  • 浸透圧調節系(体液の濃度に反応する)
  • 容量調節系(血液量に反応する)

要するにこれらが反応し「喉が乾いた」と感じ飲水行動に至ります。

暑熱環境での「喉の乾き」と関係しているのは”浸透圧調節系”であるといわれています。

→発汗にともない水分が失われ体液が濃縮されて浸透圧が上昇

→浸透圧の上昇度合いを視床下部(脳にある体内の変化を感知するセンサーがたくさんあるところ)の浸透圧受容器(浸透圧を感知するセンサー)が感知し喉が乾き飲水行動をとる

→浸透圧受容器が感知するとバゾプレッシン(抗利尿ホルモン)の分泌を刺激する

→バゾプレッシンは腎臓で水の再吸収を促進させ、尿量を減らし体内に水分を保持させるという作用がある

簡単にいうと、、

汗で水分が出て体液が濃くなる→それを脳のセンサーが感知して水を飲めという命令を出す+同時に腎臓に尿を減らして水分を出さないように働くホルモンを分泌する→濃くなっていた体液の濃度を戻す

というサイクルで体液の浸透圧が保たれている。

暑い時の激しい運動中はあまりトイレにいきたくならないのはこのためだと考えられます。

ここで重要になってくるのは、汗にはたくさんの塩分が含まれていること。

つまり、汗をかくと、水分と塩分の両方が体外へ排出される。

ただし、水分の喪失量の方が多いため、塩分も減っているが相対的に塩分濃度が高まり、浸透圧は上昇し喉の乾きが生じる。

(例えば、水分と塩分が同じ量だけ排出されれば浸透圧は変わらないのでセンサーは反応せず喉の乾きは生じない)

この原理で浸透圧が上昇している場合に、大量の水分を摂取したら、体内の塩分量は減少しているため浸透圧は運動前の状態より低下してしまいます。

これは体内のナトリウムが低下しすぎてしまう低ナトリウム血症(水中毒)といわれる状態でひどい場合には意識障害や脳機能障害が起こります。アメリカで「水飲みコンテスト」などの一気飲み大会のようなもので死亡者がでているのはこれだと考えられます。

このような症状にならないように、ヒトの身体には浸透圧が通常に戻れば飲水行動をやめるような指令が出るようになっています。

汗をかき、”水分”と”塩分”が排出された状況で水だけを補給して浸透圧(体水分の濃度)が回復させようとすれば、塩分も減っているので少ない飲水量で回復できてしまいます。もし大量に無理矢理水を摂取しても先ほどのバゾプレッシンが抑制され尿として排出されます。

このように、発汗して水分だけを摂取するとヒトの浸透圧調節系の優秀な働きにより脱水状態が一向に回復されず、自ら脱水のメカニズムにハマってしまう。

このことをタイトルにもある『自発的脱水』といいます。

このことから、ニュースや商品のCMなどで熱中症予防には”水分補給”と”塩分補給”が重要といわれる理由です。

私自身、高校球児時代は真夏の練習でも1年生が作るポカリがマズすぎたのとネチャネチャした感覚が口に残るのがいやで、水かお茶しか飲んでいませんでした。しかも「練習で冬用の長袖を着れば暑さに強くなれる!」みたいなどこからともなく流れてきた情報を採用し厚着もしていました。

約10年ほど前になるので今と比べれば、危険度は低いとはいえども最悪ですね(^_^;)

まわりくどく説明しましたが、ただ情報のみで「水やお茶だけではダメ!」と指導するよりも、指導する際の裏づけにこのような知識があれば、言葉の重みが増し簡単に説明できれば説得力が増すと思います。

選手がどこからでも簡単に情報が入ってくる中で、その情報の取捨選択の補助をする、トレーナーはそういう役割も仕事のひとつかなと働きながら感じています(^^)

熱中症の概要体温調節のメカニズム、そして今回、水分調節のメカニズムとして水分と塩分を補給することの重要性に関して説明しました。

次回はこれの知識を利用して熱中症対策としてどういった飲み物を選ぶかといった内容をup予定です。

 

ではこの辺で。

トレーナーの職業価値が上がりますように。