「ウォーミングアップのデザイン」〜チームトレーナーが意識していること〜(実践編)

チーム専属のトレーナーとして活動しております、中谷大志(AT・SC・鍼灸師)です。

前回の記事では「ウォーミングアップのデザイン(理論編)」として少し専門的な知識も含めて紹介させて頂きました。

↓まだの方は是非、この記事を読む前にチェックを↓

今回は「実践編」として、現在チームトレーナーとして働き、ウォーミングアップを担当する人間として意識していることを紹介してきたいと思います。

チームにトレーナーなど専門家がチームに存在せず、ウォーミングアップを担当する指導者の方や、学生コーチの方にとって少しでも「気づき」になれば幸いです。


まず、何をやるか?の前に、

どういう意識でウォーミングアップに取り組んでいるか?

が非常に重要です。

特に少しだけ関わったことのある「大学野球」でのエピソードには、

「あのトレーナーのアップは長いからキツイんすよね〜」

「練習前に疲れるんですよね〜」

など、ウォーミングアップから”やらされている”雰囲気がありました。

(有名強豪大学でもこんな感じです。。)

それが、トレーナーに問題があるのか、選手の理解が足りないのか、両者に問題があるのか、しっかりと分析する必要があるでしょう。

試合、練習、自主練習、その日に実施される内容に限らず、

絶対に毎日行うのが「ウォーミングアップ」です。

個人的な私のトレーナーマインドのひとつに、

”大きな成果”を出すためには、”小さな積み重ね”が必要」

という、成功マインド(?)があります。

↑の記事でその辺りの内容を深掘りしてますので暇な時にでも是非↑

ここでいうところの ”小さな積み重ね” が、「ウォーミングアップ」に当てはまります。

完全休養を取る日を除けばほぼ毎日といって良いほど時間を割くであろう「ウォーミングアップ」

毎回、約30分と仮定して、週5回、月20回、計算してみてくだい。

(月:600分=10時間ぐらい?) 

キャッチボールやトスバッティングなど専門的なウォーミングアップも含めると、もっと時間を費やしてることでしょう。(月:20時間ぐらい?)

これを、「なんとなくやるか」「目的を持ってやるか」の差は、日々感じることは小さくても、積もり積もった際に必ず大きな差になるのはイメージできると思います。

さらに、ウォーミングアップは練習の最初、いわゆる「入り」になるので、その日の”やる気スイッチ”としても重要な役割を果たしているという理解が必要です。

そこで私が日頃から選手に口酸っぱく言っていること、

「意識して欲しい!」と強く願っていることは、、

  • 昨日(普段)との違いに気づく
  • 自分のウィークポイント(弱点)に向き合う
  • 今日やるべき事、頭の整理をして取り組む
  • 総じて、ただの”身体慣らし”で終わらせない

主にそれらを、定期的に促し続けています。

選手も人間なので、気分が乗らない日や、疲れている日など、”なんとなく” ウォーミングアップをして練習に入ってしまうことがあります。

できるだけ、ウォーミングアップが始まる段階、もしくはウォーミングアップ中に、そのスイッチをバチっと”ON”に切り替えることがトレーナー(ウォーミングアップ担当者)の役割のひとつだと思います。

長くなりましたが、それを踏まえた上で「実践編」の解説を読んで頂きたいです!

時期によってウォーミングアップの流れは変えています。

もっと言えば、その年によって「前年の反省を踏まえて」やることを多少、変更したりしています。

1月〜2月は比較的、全体で行うウォーミングアップ(全員同じ事をする)主体で約45分ぐらいかけて行います。

(シーズン初めの1月などは、トレーニング要素も含めて60分〜90分ぐらいの時間を割いて「身体づくり・動きづくり」に取り組みます)

シーズン中であっても1週間など長期的な休みを挟んだ際などは、一定期間、全体で行うこともありますが、3月〜シーズンインの時期に差し掛かるにあたって「個人で行うウォーミングアップ」(チームでは”フリーアップ”と呼んでいます)の割合を多くしています。

賛否はあると思いますが、これはシーズンが進んでいくにつれて、先ほど挙げた、

「自分のウィークポイント(弱点)に向き合う」

時間を大切にして欲しいという想いから「フリーアップ」を設けています。


ここからは、シーズン中のウォーミングアップの大まかな流れに沿って紹介してきます。

●ストレッチ●

まず、全体でストレッチから入ります。

ストレッチには「パートナーと行うもの」と「1人で行うもの」に分かれますが、1種目を除いては1人で行うセルフストレッチを行います。

また、ストレッチ方法にも数種類ありますが、ここでは持続的に一部位を伸ばすような「スタティックストレッチ」ではなく、各方向への動きを伴う「アクティブストレッチ」または「ダイナミックストレッチ」と呼ばれる方法で行います。

故障部位や個人的に硬い箇所がある選手は練習開始前の時間に個人で行ったり「温浴」や「超音波」などを使った受動的なウォーミングアップも行っています

・約20種類ほどの種目のストレッチを10分程度かけて行います。

→この種目は基本的に変更せずに「同じこと」を実施します

→その中で昨日(普段)との違いに気づくことが狙いです

”違い”とは、できなくなっている事できるようになっている事できるできないは変わっていないが「感覚」いつもと違う(良いor悪い)事、などが含まれ、得られる情報は様々です

トレーナーとしては、その全体像を見て、”表情”や”動き”から異変がないかをこの時点で普段との違いに気づくように努めます。

(毎日、見られる専属トレーナーとしてのメリットですが、久しぶりに会うから気づくことがあるように毎日顔を合わすデメリットにも注意します)

例:明らかに片側だけ動きが小さい、1箇所をやたらと気にしている(さすったり、揉んだり)、表情の曇り具合、など、、

●フリーアップ●

冬から春先にかけては「30分程度」、夏場(朝の気温が25℃超えてきたあたり)からは「20分程度」時間を取り「個人」でウォーミングアップ行います。

マーカー、ラダー、ミニハードル、各種チューブ、メディシンボールなどは練習開始前に準備しておきます。

この「フリーアップ」の最大の目的は前述した、

「自分のウィークポイント(弱点)に向き合う」ことです。

この時間をいかに充実させるかが重要であり、”頭の整理ができていない選手”はこの時間で浮き彫りになります。

シーズンイン時の「全体アップ」主体の時期に ”いかに意識して取り組んでいるか” でこの時間の各選手の充実度は変わってくると思います。

やはり、1年目、2年目の若手選手は学生時代に「やらされていた」影響で、自分で考えて動く能力が低いです。

その中でも、チームの雰囲気や先輩選手の行動を見て、早々から自立できる選手と、自立できずに若手選手同士で群れる選手に分かれる傾向にあります。

(基本的にその感じ取る力は技術練習にも繋がるので、後者である場合はなかなか試合に出られなかったり、チャンスを掴みきれないことが多いです)

過去に大きな怪我があったり、年齢を重ねている選手は自分のやるべき事を把握しており、”ボーッと”している時間はありません。まさに「経験を活かす」とはこの事ですね。

でも、防げる怪我はなるべく防ぐに越した事はないので、大きな怪我を経験する前に気づいてもらいたいとこです(^_^;)

(これはなかなかムズカシイ、、でも気づいてもらわなアカン、、)

トレーナーとしては、この時間に ”個人の動きを全体像で把握” したり、”不安箇所のある選手””動きがおかしい選手””運動量が明らかに少ないと選手”に気づいてコミュニケーションを取り、個々のの状態把握を行います。

終始、トレーナーやウォーミングアップ指導者は「気づく力」が必要です。

ここで、トレーナー(指導者)が腕を組んで微動だにせず、いかにも

「サボんなよ!監視してるぞ!」

といった雰囲気では選手も

「ちょっとここがおかしい感じがするんですけど、、」

とか気軽に相談しにくいですよね?(^_^;)

その雰囲気づくりはウォーミングアップ中に限らず、選手との日頃からの付き合い方も重要だと思います。

●全体ダッシュ●

フリーアップが終われば、”スパイクに履き替えて”もう一度、全体で動きます。

ここで意識することは、前記事の理論編でも紹介した、

「スピードリハーサル」

です。

(実際のプレーと同程度の強度で力を発揮しておくこと)

ここで行う種目はそんなに多く実施しないので、「100%」の出力を意識して取り組んでもらいます。

時間にしても、「5分程度」です。

何本も何本も”全力で!”とやっていたら心理的にも自然に”抜き”ますよね?

ここでは量より質です。

ここで行う種目の選択は、基本的に日替わりでトレーナーが指示のもと行いますが、複雑すぎて迷いながら行っていしまっても目的から外れるため、その辺りの注意が必要です。

主に、直線スプリントを中心に、方向転換切り返し動作を含むスプリントステップ動作加速・減速動作など、その競技に必要な「ムーブメントスキル」を確認(リハーサル)します。

野球であれば、打球処理の際の、前後左右の切り返し動作や、反転動作はマストな要素と考えられます。

あえて、野球で起こりにくいような(直角に曲がる方向転換を繰り返す動作)なども頻度少ないですが取り入れています。

最後の1本は、瞬時の判断(手が開いた方or開かなかった方へスタート)などを交えた種目を行うようにしています。

頭が起きていない選手やそれまでの動きを見てあまり集中できてないと感じる選手は間違えたり判断が遅れたりします。

(面白いことに予言者のごとく、「この選手今日ミスりそうやな〜」って選手は結構当たります。笑)

ここで、全力が出せてなかったり、上記のような、頭と身体が一致していない(集中力が欠けている)とこれから実施される、試合や技術練習で ”一瞬の力み” や ”判断ミス” などで思いもよらぬ怪我に繋がりかねません。

これが、「防げる(防げた)怪我」だと思います。

ウォーミングアップの意識ひとつで貴重な1シーズンの数ヶ月の離脱はチームにとっても、本人にとっても痛いです。

数ヶ月で済めば良い方かも知れません、、それが原因でそのレベルのアスリートとして競技が継続できない最悪の状況もありえます。

それらを踏まえて「全体ダッシュ」で、トレーナーはキューイング(声かけ)やイメージを作るためのデモンストレーション(実演)のスキルが必要だと思います。

この時間を利用して、定期的に、各種アジリティタイムやスプリントタイムの測定を行ったりもします。

タイムが出ることによって、コンディション把握もありますが、より「100%」を出す「スピードリハーサル」を意識できるので、私の中では重要視しています。

こういった段階を経て、キャッチボールやトスバッティングといった「専門的ウォーミングアップ」に移行していくといった流れです。

たかが、ウォーミングアップ

されどウォーミングアップ

です。

恥ずかしながら、この大切さを実感したのはこの職業(この立場)についてからです。

案の定、怪我しまくりの野球人生でした(~_~;)

怪我をしたことない選手に対して、予防という意識は促しますが、限界があるように感じます。

ただし「パフォーマンスアップ(強化)」と言い換えればそのような選手にとっても必要なことだとイメージしやすいかも知れません。

「予防」というと守りに入る(制限しながら動く)、ようなイメージを持たれることが多いですが、「強化」も大切な「予防」のひとつです。

スピードリハーサルのような、100%を出すことも(ウォーミングアップのお話からは逸れますが)ウエイトトレーニングでしっかり重量をあげたり、爆発的な力を発揮するのことも、怪我「予防」のひとつだと私は考えています

「ウエイトトレーニングしてるから怪我するんだ!」

もっとストレッチをやれ!自重トレーニングをやれ!」

(ほんまにウエイトトレーニングが悪なのでしょうか?)

(ほんまにストレッチで解決するんでしょうか?)

もちろん逆も然りです、、話がすこぶる逸れました ^^;

今回は、毎日やる小さな積み重ねの大切さ「ウォーミングアップ」の大切さを実際にチームで取り組んでいることを通してお伝えさせていただきました。

この、積み重ねがライバルチームやライバル選手とのわずかな差を生むひとつの要素になることを期待しています!

最後までお読み頂きありがとうございました。

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